QRコード
QRCODE
インフォメーション
長野県・信州ブログコミュニティサイトナガブロ
ログイン

ホームページ制作 長野市 松本市-Web8

アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
exlovea
exlovea

2016年08月18日

い宮廷風の丁重さをよ


「さあ、いつまでも雨の中に立っていないでこちらへいらっしゃい」老婦人が言った。「お友だちもごいっしょにね」彼女は踵を返し、まわりで飛びはねる沼獣を連れて、柳の木立ちのあいだの小道を歩き始めた。
「どうするんだい」ガリオンが小声でたずねた。
「いっしょに行くことにしよう」ベルガラスはボートから島に足をおろしながら言った。
 ガリオンは先に何が待ち受けているかもわからないまま、シルクとともに老人の後に従って柳からしたたり落ちる雨に濡れた小道を歩いていった。眼の前に小さな庭園のついた、わらぶきの小ぎれいな家があらわれたときはさすがのかれも仰天した。家は乾いた丸太を組み合わせて作られたもので、すき間はびっしりとコケでふさがれ、煙突からはひと筋の細い煙があがっていた。
 戸口に立った老婦人は、注意深くイグサの靴ふきで足をぬぐい、マントについた雨のしずくを振りはらった。そしてドアを開けると後ろも見ずに、さっさと中へ入っていった。
 シルクは家の前で立ち止まって、うさんくさそうな表情を浮かべた。「本当に大丈夫なんでしょうね、ベルガラス」かれは小さな声でたずねた。「ヴォルダイについちゃ、いろいろとよくない噂を聞いてますよ」
「だが彼女が何を望んでいるかを知るにはこれしか方法がない」ベルガラスは言った。「それにヴォルダイと話をしなければ、これ以上先に進むこともできないような気がしてな。さあ、入ろう。よく足をふくのを忘れずにな」
 ヴォルダイの家の内部はすみずみまできれいに手入れされていた。天井は低く、がっしりした梁に支えられていた。木の床は真っ白になるまで磨きこまれ、アーチ型の暖炉の前にはテーブルと何組かの椅子が置かれている。暖炉の鉄鉤には鍋がかけられていた。テーブルの上にはヒマワリをいけた花瓶が置かれ、庭を見おろす窓にはカー
テンが吊されていた。
「あなたのお友だちを紹介してくださいな、ベルガラス」老婦人はマントを釘にかけながら言った。彼女は茶色の簡素なドレスの正面のしわを手でのばした。
「むろんだとも、ヴォルダイ」老人は礼儀正しく答えた。「こちらはケルダー王子。きみの同郷人だ。そしてこちらがリヴァの王ベルガリオンだ」
「高貴な方々ばかりね」老婦人はあいかわらず平板な声で言った。「ヴォルダイの家にようこそいらっしゃいました」
「失礼ながら、マダム」シルクはめいっぱそおった声で言った。「いろいろと芳しくないお噂を聞いているのですが」
「〈湿原の魔女ヴォルダイ〉ですか」老婦人は面白がっているような表情だった。「あの人たちはまだわたしのことをそう呼んでいるのかしら」
 シルクはほほ笑みを返しながら言った。「残念ながら連中の表現は何というかもっと誤解を与えるようなたぐいのものでしてね」
「〈沼の鬼婆〉」彼女は愚直な百姓の口調をまねて言った。「〈旅人を沼に引きずり込んで溺れ死にさせるもの〉または、〈沼の女王〉」老婦人の唇が苦々しげにゆがんだ。  


Posted by exlovea at 13:21Comments(0)