2017年05月24日
な世界に直面するこ

好なうちにできるだけ早く、ふたりの船員とともに數碼化服務、飛行機で南ベース・キャンプに来てくれと命じた。そして調査隊の人選について話しあい、わたしのベース・キャンプにある橇《そり》と犬とともに、全員をくりだすことに決めた。これほどの規模であっても、重い機器を輸送する特別の目的のためにつくられた巨大な飛行機には、まだ十分な余裕があった。わたしはあいかわらず、断続的にレイクとの交信を試みようとしていたが、まったく甲斐はなかった。
シャーマンは船員のグンナルサンとラールセンとともに七時半に離陸し、飛行中いくども、穏やかな飛行がつづいていると報告してきた。わたしたちのベース・キャンプに到着したのは真夜中で、ただちに全員で次の行動について話しあった。中継基地なしにただ一機の飛行機で南極を飛ぶのは危険だったが、紛れもなく必要だと思えるものに対して、誰もしりごみはしなか楊海成った。わたしたちは飛行機に予備的な積込を終えたあと、二時から短時間眠ったが、四時にはまたおきて、積込と梱包《こんぽう》を完了した。
一月二十五日の午前七時十五分、わたしたちはマクタイの操縦する飛行機で、十人の乗員、七頭の犬、一台の橇、予備の燃料と食糧、飛行機用の無線機をはじめとする装備とともに、北西に向けて飛行しはじめた。空は晴れ、あまり風もなく、気温も比較的しのぎやすかったから、レイクがキャンプの位置として伝えた経緯度に到着するのに、ほとんど問題はないと思い、この点について不安はなかった。わたしたちの不安はひとえに、キャンプと交信しようとしても沈黙だけがつづくので、何を見いだすことになるか、いや、何を見いだせないことになるかに集中していた。
あの四時間半にわたる飛行中に起きた出来事のすべては、わたしが人生でもっとも重大な立場にあったため、はっきりと記憶に焼きついている。五十四歳にして、通常の精神が外的な自然と自然法則という馴れ親しんだ概念を通していだいている、精神の安らぎと平衡というものが、すべて失われてしまったことを示す、そんな状況だったからだ。これ以後わたしたち十人は――とりわけ大学院生のダンフォースとわたしは――何をもってしてもわたしたちの感情から消すことのできない、どうあっても一般の人びとに伝える気にはなれない、恐怖の潜む厖大《ぼうだい》とになったのだった。新聞はわたしたちが飛行中に送信した報告を発表して、わたしたちが無着陸飛行をしたこと、上空のすさまじい強風を二度にわたって克服したこと、三日まえにレイクが遠征の途中で掘りおこして地表にのこる跡を一瞥《いちべつ》したこと、アムンゼンとバードも書きとめている、円筒形をした一団のふわふわした雪の塊が、風に吹かれて凍てついた平原を果しなくころがっていくのを目撃したことも伝えている。しかしジャーナリズムが理解できる言葉ではわたしたちの気持がどうにも伝えられないものもあったし、どうあっても公表をさしひかえなければならないと判断したものもあった。
魔女にふさわしい円錐と尖鋒をはじめて前方に認めたのは、船員のラールセンで、ラールセンが声をあげたことから全員が大きな貨物室の窓に向かった。かなりな速dermes 激光脫毛度を出しているにもかかわらず、なかなかはっきり見えるようにならないことから、まだはるかな遠方にあるにちがいないこと、いま見えるのは山脈が異常に高いからにすぎないことがわかった。しかし山脈はすこしずつ西の空にいかめしくそびえたつようになっていき、わたしたちにもむき
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2017年05月10日
夢が熱を生

みだしたのか、あるいは熱が夢をもたらしたのか、ウォルター・ギルマンにはわからなかった。ともあれその古さびた街では、あらゆるものの背後に、鬱積《うっせき》して心を虫食《むしば》む恐怖がわだかまっており、ギルマンが数字や公式を書きとめ、研究に全力をつくし、ときに質素な鉄のベッドで寝返りを繰返す、黴《かび》臭くて穢《きたな》らしい切妻造りの屋根裏部屋についても、事情はかわることがなかった。ギルマンの聴覚は不思議にも耐えがたいほど鋭敏になっていき、時をきざむ音が大砲の轟きのように思えるまでになったため、安物の置時計はもうとめられてから久しかった。夜ともなれば、外の黒ぐろとした街でおこるかすかなざわめき、虫喰いのある間仕切りのなかを鼠《ねずみ》がかけまわる不気味な音、歳月を閲《けみ》した家のどこかで材木のきしむ音、そういったものだけでも、不快な大音声のように感じられてしまう。闇は常に不可解な音に満ちていた――そうであってもなお、ギルマンはときとして、耳にするそうした音が静まれば、その背後に潜んでいるやもしれぬ、何か別種のかすかな音が聞こえるようになるのではないかと恐れ、身を震わせることがあった。
ギルマンがいるのは、変化をこばみ伝説の巣喰う街、アーカムであって、この街にひしめく駒形切妻屋根は、その昔この地方の冥《くら》い日々に、魔女たちが王の配下から身を隠した屋根裏部屋を、いまも揺れたわみながら覆っている。そしてこの街にあっても、ギルマンが暮す切妻造りの屋根裏部屋ほど、凶《まが》まがしい記憶にいろどられたところはなかった――この家のこの部屋こそ、あのキザイア・メイスンの隠れ家ともなったところであり、キザイアが最後にセイレムの刑務所から逃亡したことについて、その謎を解き明かせた者はまだあらわれるにいたっていない。それは一六九二年のことだった――刑務所の看守は発狂して、キザイアの独房から白い牙をもつ小さな毛むくじゃらの生物が走り出たと口走ったし、コットン・マザーにしても、灰色の壁に赤いねばねばした液体で描かれた、特異な曲線や角度が何を表しているかを詳《つまび》らかにすることはできなかった。
おそらくギルマンはあれほど研究にいそしむべきではなかったのだろう。非ユークリッド幾何学の微積分や量子物理学だけでも、頭脳を極度に緊張させるのだから、そうしたものを民話とつきあわせて、ゴティック小説に見られる凶まがしい暗示や、炉辺で囁《ささや》かれる法外な話の裏面に潜む、多次元の現実とも呼べるものについて、その奇怪な背景を明らかにしようとしたりすれば、およそ精神の緊張と無縁でいられるわけがない。ギルマンはハヴァーヒルの出身だが、太古の魔術の途方もない伝承を数学に結びつけるようになったのは、アーカムの大学に入学してかdermes 脫毛價錢らのことだった。古さびた街の雰囲気にこもる何かが、いつしかギルマンの想像力に働きかけたのだろう。ミスカトニック大学の教授たちは根をつめないようにとギルマンに忠告し、履修に必要な単位をわざわざへらすことまでした。そればかりか、大学の付属図書館で鍵つきの保管庫に収められている、禁断の秘密にかかわるいかがわしい書物を繙《ひもと》くことも、ギルマンにやめさせたのである。しかしこうした予防措置も時期を逸したものだったため
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