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2017年05月10日

夢が熱を生



みだしたのか、あるいは熱が夢をもたらしたのか、ウォルター・ギルマンにはわからなかった。ともあれその古さびた街では、あらゆるものの背後に、鬱積《うっせき》して心を虫食《むしば》む恐怖がわだかまっており、ギルマンが数字や公式を書きとめ、研究に全力をつくし、ときに質素な鉄のベッドで寝返りを繰返す、黴《かび》臭くて穢《きたな》らしい切妻造りの屋根裏部屋についても、事情はかわることがなかった。ギルマンの聴覚は不思議にも耐えがたいほど鋭敏になっていき、時をきざむ音が大砲の轟きのように思えるまでになったため、安物の置時計はもうとめられてから久しかった。夜ともなれば、外の黒ぐろとした街でおこるかすかなざわめき、虫喰いのある間仕切りのなかを鼠《ねずみ》がかけまわる不気味な音、歳月を閲《けみ》した家のどこかで材木のきしむ音、そういったものだけでも、不快な大音声のように感じられてしまう。闇は常に不可解な音に満ちていた――そうであってもなお、ギルマンはときとして、耳にするそうした音が静まれば、その背後に潜んでいるやもしれぬ、何か別種のかすかな音が聞こえるようになるのではないかと恐れ、身を震わせることがあった。
 ギルマンがいるのは、変化をこばみ伝説の巣喰う街、アーカムであって、この街にひしめく駒形切妻屋根は、その昔この地方の冥《くら》い日々に、魔女たちが王の配下から身を隠した屋根裏部屋を、いまも揺れたわみながら覆っている。そしてこの街にあっても、ギルマンが暮す切妻造りの屋根裏部屋ほど、凶《まが》まがしい記憶にいろどられたところはなかった――この家のこの部屋こそ、あのキザイア・メイスンの隠れ家ともなったところであり、キザイアが最後にセイレムの刑務所から逃亡したことについて、その謎を解き明かせた者はまだあらわれるにいたっていない。それは一六九二年のことだった――刑務所の看守は発狂して、キザイアの独房から白い牙をもつ小さな毛むくじゃらの生物が走り出たと口走ったし、コットン・マザーにしても、灰色の壁に赤いねばねばした液体で描かれた、特異な曲線や角度が何を表しているかを詳《つまび》らかにすることはできなかった。
 おそらくギルマンはあれほど研究にいそしむべきではなかったのだろう。非ユークリッド幾何学の微積分や量子物理学だけでも、頭脳を極度に緊張させるのだから、そうしたものを民話とつきあわせて、ゴティック小説に見られる凶まがしい暗示や、炉辺で囁《ささや》かれる法外な話の裏面に潜む、多次元の現実とも呼べるものについて、その奇怪な背景を明らかにしようとしたりすれば、およそ精神の緊張と無縁でいられるわけがない。ギルマンはハヴァーヒルの出身だが、太古の魔術の途方もない伝承を数学に結びつけるようになったのは、アーカムの大学に入学してかdermes 脫毛價錢らのことだった。古さびた街の雰囲気にこもる何かが、いつしかギルマンの想像力に働きかけたのだろう。ミスカトニック大学の教授たちは根をつめないようにとギルマンに忠告し、履修に必要な単位をわざわざへらすことまでした。そればかりか、大学の付属図書館で鍵つきの保管庫に収められている、禁断の秘密にかかわるいかがわしい書物を繙《ひもと》くことも、ギルマンにやめさせたのである。しかしこうした予防措置も時期を逸したものだったため  


Posted by exlovea at 12:22Comments(0)